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AWS責任共有モデルとは?初心者でもわかる責任範囲とセキュリティ対策

公開日:2024年11月11日 更新日:2024年11月11日

AWSを利用する企業にとって、セキュリティとコンプライアンスの確保は重要です。しかし、AWSのようなクラウド環境では、従来のオンプレミスとは異なる管理と責任分担が必要です。ここで理解すべきなのが「責任共有モデル」です。このモデルは、AWSと利用者の間でセキュリティ管理の役割分担を明確にし、効率的かつ安全な運用を実現するための基盤となります。

この記事では、AWS責任共有モデルの基本的な考え方から、AWSが管理するインフラと利用者が担うべきセキュリティ対策について詳しく解説します。AWSの提供するセキュリティサービスも併せて紹介し、AWSクラウドサービスを効果的に活用するためのポイントをわかりやすくお伝えします。

 

1. AWS責任共有モデルの概要

AWS責任共有モデルとは、AWSが担う部分と、利用者が責任を持つ部分を明確に区別するフレームワークです。このモデルを理解することで、AWSクラウドを安心・安全に利用できる体制を整えることが可能です。クラウドのセキュリティや管理に関する役割分担が明確になるため、利用者側がどこまで対策を講じるべきかがわかりやすくなります。

 

AWS責任共有モデルの基本概念

責任共有モデルでは、AWSが「クラウドのセキュリティ」を担当し、利用者が「クラウド内のセキュリティ」を担当するという考え方が基本です。AWSがクラウド全体のインフラストラクチャを管理し、物理的なセキュリティや基盤システムを守る一方で、利用者はデータの保護やアクセス制御といった部分の責任を負います。こうした役割分担により、AWSはインフラの信頼性を高め、利用者は自身のデータやアプリケーションの保護に専念できます。

 

AWSが責任を持つ部分とユーザーが責任を持つ部分の違い

AWS責任共有モデルの考え方では、AWSとユーザーが担う責任の範囲が異なります。AWSはクラウド環境の基盤となる物理インフラのセキュリティと可用性を維持する一方で、ユーザーはクラウド内で利用するリソースの管理、設定、アクセス管理などを行います。これにより、AWSは物理的なセキュリティや運用上の可用性に注力し、ユーザーはクラウド内のリソースのセキュリティに専念することが可能です。

 

2. AWS側の責任範囲

クラウドサービスの基盤を支えるため、AWS側が担うべき責任範囲にはいくつかの具体的な要素が含まれています。これらの責任は、AWSがインフラを維持管理し、利用者が安心してクラウドを使用できるようにするための重要な部分です。

 

物理的な保護:データセンターの立地と保護対策

データセンターの物理的な保護はAWSの責任範囲です。AWSは、データセンターを異常気象や自然災害から守るために、地震や洪水リスクが低い立地にデータセンターを配置しています。また、厳格な物理セキュリティ対策が施されており、防御壁や監視カメラ、多要素認証によるアクセス制御などが導入されています。データセンターは24時間365日体制で監視され、外部からの不正アクセスがないように保護されています。

環境リスクに対する対応

データセンターは地震や台風などのリスクを考慮した場所に設置されており、AWSは災害発生時にもサービスが継続できるようにしています。複数のアベイラビリティゾーンに分散して配置されているため、片方が機能しなくなっても、他のゾーンでバックアップが機能します。

多層セキュリティによる保護

データセンターの物理的セキュリティは、防御壁や侵入検知、警備体制によって強化されています。また、内部へのアクセスも厳重に管理されており、許可された担当者のみがアクセスできるようになっています。

 

インフラストラクチャの管理:電力システム、空調、監視体制

AWSは、データセンターのインフラストラクチャ管理においても責任を負います。24時間体制の監視と冗長化された電力システム、バックアップ電源の確保、空調管理により、インフラストラクチャの安定稼働を維持しています。電力供給が中断しても、冗長化されたシステムが作動し、サービスを継続できる仕組みを整えています。

電力と空調の冗長化

電力供給は冗長化されており、バックアップ電源が確保されています。空調システムも二重化され、24時間の監視のもとで適切な温度が維持され、機器の最適な動作環境が保たれています。

24時間365日体制の監視

データセンターは、24時間365日体制で監視されており、異常があれば即座に対応できる体制が整えられています。これにより、インフラストラクチャの可用性とセキュリティが高い水準で維持されます。

 

ホストOS管理:多要素認証とログ監視による管理

AWSのホストOSは、高度なアクセス制御とログ監視により厳重に管理されています。ホストOSの管理者には、多要素認証が適用され、アクセス権は必要に応じて付与され、作業が終わると削除されます。すべての操作はログとして記録され、定期的に監査されるため、不正アクセスや操作があった場合にも迅速に対応できます。

アクセス制御とログ管理

ホストOSへのアクセスは、厳格なアクセス制御と多要素認証によって制限されています。アクセスログは全て記録され、監査対象となることで、高度なセキュリティが実現されています。

運用監視体制と監査

ホストOSの操作は、ログが管理され、運用体制に従って監査が実施されています。定期的な監査によって、セキュリティインシデントが未然に防止されています。

 

3. ユーザー側の責任範囲

ユーザーはクラウドサービスを利用する際に、セキュリティや運用管理のいくつかの重要な責任を負うことになります。AWSが基盤を提供する一方で、クラウド上で利用するリソースの保護はユーザーの管理範囲に含まれます。

 

ゲストOS管理:セキュリティパッチとアプリケーション管理

Amazon EC2などのIaaSサービスを利用する場合、ゲストOSの更新やセキュリティパッチの適用はユーザーの責任範囲に入ります。また、ファイアウォール設定やインストールするアプリケーションの管理もユーザー側で行わなければなりません。セキュリティパッチが適用されない場合、脆弱性のリスクが高まるため、定期的なメンテナンスが必要です。

セキュリティパッチの適用

ユーザーは、ゲストOSやインストールしたソフトウェアにセキュリティパッチを適用する責任を負います。パッチ適用の頻度は、脅威の進化に合わせて検討する必要があります。

ファイアウォール設定と管理

ゲストOSやアプリケーションには、ファイアウォールの設定を行い、外部からの不正アクセスを防ぐ必要があります。適切な設定を行うことで、セキュリティが強化されます。

 

ネットワーク設定:VPCやセキュリティグループの設定

ネットワーク設定は、AWSクラウド内のセキュリティを確保するために重要です。VPC(仮想プライベートクラウド)の設定や、セキュリティグループの適切な設定が必要です。これにより、許可されたトラフィックのみが許可され、リスクを最小限に抑えることができます。

VPCの設定

VPCはAWS内に構築されるプライベートネットワークで、ネットワークのセキュリティを管理する上で重要な役割を果たします。サブネットやルートテーブルの設定によって、ネットワークの分離とアクセス制御が可能です。

セキュリティグループの構成

セキュリティグループは、AWS内のリソースに対するアクセス権を管理するための機能で、適切に設定することで、不正アクセスを防ぎ、内部と外部からのトラフィックを制御します。

 

データの暗号化:KMSを利用したデータの保護

ユーザーはデータの暗号化も管理する責任を負います。AWS Key Management Service(KMS)を利用することで、データの暗号化キーを安全に管理できます。KMSは、データの暗号化と復号化に使用され、データ保護のレベルを高めます。

暗号化キーの管理

暗号化キーはKMSで生成および管理され、アクセス制御とともにユーザーの責任となります。キーの管理と使用権限の適切な設定がデータの保護に重要です。

データの分類と保護

データの重要性に応じて、適切な暗号化方法を選択し、KMSやその他のツールを使用して保護します。

 

アクセス権限管理:IAMによるアクセス制御

ユーザーはIAM(AWS Identity and Access Management)を用いて、アクセス権限を適切に管理する必要があります。IAMは、ユーザーやグループごとにアクセス権限を細かく設定でき、不要なアクセスを制限することで、セキュリティリスクを低減します。

ユーザーとグループの権限設定

IAMでは、ユーザーやグループごとに必要な権限のみを付与し、アクセス範囲を限定することが推奨されます。

多要素認証(MFA)の導入

重要なアカウントには多要素認証(MFA)を導入し、アクセス制御を強化することができます。MFAを適用することで、セキュリティがさらに強化されます。

 

4. AWSのセキュリティ機能とサービス

AWSが提供する各種のセキュリティ機能とサービスは、ユーザーが適切なセキュリティ対策を実施するための有用なツールです。これらを活用することで、AWS環境のセキュリティレベルをさらに高められます。

 

AWS WAFとAWS Shield:外部攻撃からの保護

AWS WAF(Web Application Firewall)とAWS Shieldは、Webアプリケーションの保護に役立つサービスです。WAFはSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといった脆弱性攻撃からアプリケーションを守り、AWS ShieldはDDoS攻撃からの防御を提供します。

WAFの活用方法

WAFは定義されたルールに基づいて、Webトラフィックをフィルタリングし、攻撃からアプリケーションを守ります。設定も柔軟で、企業のニーズに合わせてカスタマイズ可能です。

ShieldによるDDoS攻撃の防御

AWS Shieldは、分散型サービス拒否(DDoS)攻撃からAWS環境を保護します。Shieldを利用することで、DDoS攻撃の脅威を軽減し、可用性を維持することができます。

 

GuardDuty:異常トラフィックや脅威の検出

GuardDutyは、AWSアカウントの脅威を自動的に検出し、セキュリティインシデントに迅速に対応できるマネージドサービスです。ログデータを自動で分析し、異常を検知するため、ユーザーはセキュリティ監視にかける時間と労力を削減できます。

脅威検出とリアルタイムのアラート

GuardDutyは、異常な活動が検出された場合にリアルタイムでアラートを発行し、迅速な対応を可能にします。脅威検出の精度も高く、企業のセキュリティ強化に役立ちます。

統合された脅威インテリジェンス

GuardDutyは、AWSの内部データだけでなく、外部の脅威インテリジェンスと連携して、検知の精度を高めています。これにより、最新の脅威からもシステムを保護できます。

 

CloudTrailとCloudWatch:ログの監視とインシデント管理

CloudTrailとCloudWatchは、AWS環境内のログ監視とインシデント管理をサポートするサービスです。CloudTrailはユーザーの操作ログを記録し、CloudWatchはシステムパフォーマンスを監視して異常があればアラートを発行します。

CloudTrailによる操作履歴の追跡

CloudTrailは、アカウント内での全操作を記録し、コンプライアンスとセキュリティ監査の基盤を提供します。

CloudWatchでのパフォーマンス管理

CloudWatchは、システムパフォーマンスの監視ツールであり、異常があればアラートを発信します。リソースの最適化にも役立ちます。

 

5. まとめ

AWS責任共有モデルは、クラウド利用者とAWSの役割を明確にし、効果的なセキュリティ対策を可能にします。利用者はデータやアクセス管理を担当し、AWSはインフラの安全性を確保します。責任共有モデルを理解し、適切なセキュリティサービスを活用することで、AWSクラウドの安全な運用を実現しましょう。

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この記事を書いた人

釣見 駿

株式会社CLANE 取締役 / 学生時にマイナビニュースでメディア運営を行う。その後広告代理店で働きながら、2018年にCLANEの創業時にジョイン。WEBデザインや広告をもっと知りたい方に、役立つ情報をお届けします。

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