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LMS選び方ガイド|比較すべき6つの観点と導入前チェックリスト

公開日:2026年7月15日 更新日:2026年7月15日
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清水悠也

株式会社CLANE 執行役員。eラーニング・人材育成領域で10年以上の経験を持ち、法人向けオンライン学習プラットフォーム「Learnify」の事業戦略・コンテンツ設計を統括してきた。近年はその知見を土台に、AIを開発工程へ組み込み業務ツールやサービスを自ら設計・開発する「AI駆動開発」を実践。営業・マーケティング・ナレッジ管理などの業務を自動化するB2Bプロダクト群「CLANE ONE」の企画から開発、グロースまでを統括している。SEO・AIO対策やリスティング広告、マーケティングオートメーションを軸としたデジタルマーケティングに精通し、自社の事業で実証した仕組みをそのまま企業へ提供する支援スタイルを強みとする。また、起業支援サービス「起業の窓口」のアドバイザーとしても活動し、経営・事業立ち上げの実践知見を活かした情報発信を続けている。

社内研修のデジタル化や、教育・資格事業のオンライン展開を検討する企業にとって、LMS(Learning Management System:学習管理システム)の選定は重要な意思決定のひとつです。製品数が増え、機能の差異も複雑になった今、「何を基準に選べばよいか」が見えにくくなっているケースは少なくありません。

LMSは導入後に長期間使い続けるシステムであるため、初期費用だけでなく運用負荷・拡張性・サポート体制まで含めて判断する必要があります。短期的なコスト比較だけで選定を進めると、運用フェーズで想定外の課題に直面することも珍しくありません。

本記事では、LMSを比較・選定する際に確認すべき6つの観点を整理したうえで、導入前に自社の要件を確認するためのチェックリストを提示します。製品カタログを読み比べる前に、まず「自社にとって何が必要か」を言語化するための判断軸として活用してください。

LMS選定で失敗が起きる理由 — 「機能比較」だけでは足りない

LMS(Learning Management System:学習管理システム)の導入を検討する際、多くの担当者がまず着手するのが「機能一覧の横並び比較」です。しかし、機能スペックだけを根拠に選定を進めると、導入後に深刻な問題が顕在化するケースが少なくありません。

よくある失敗パターン — 導入後に顕在化する3つの問題

LMS導入後の失敗には、共通したパターンがあります。

  • 運用破綻:管理者の工数が想定を大きく超え、担当者が変わるたびに運用が止まる。コンテンツのアップロード・受講管理・レポート出力といった日常業務が、現場にとって負荷になっている状態です。
  • 活用低迷:受講率が上がらず、形骸化する。UIが使いにくい、通知機能が弱い、モバイル対応が不十分といった理由で、学習者が自発的にログインしなくなるケースがほとんどです。
  • 乗り換えコストの発生:契約後に「要件を満たしていなかった」と気づき、移行を余儀なくされる。受講履歴データの移行作業や再契約の費用は、当初の導入コストを上回ることもあります。

これらの失敗に共通するのは、「機能の有無」だけを比較して、自社の運用体制・利用者の特性・将来の拡張性を検討しなかった点です。カタログ上の機能が充実していても、現場に合わなければ意味をなしません。

本記事で解説する内容と活用方法

本記事では、LMS選定で判断を誤らないために必要な6つの観点を体系的に解説します。選定前に固めるべき目的の整理から、クラウド型・オンプレミス型といったタイプ別の違い、教育事業立ち上げ特有の視点、発注前の社内チェックリストまでを順に取り上げます。機能比較の前に確認すべき問いを整理することが、選定を成功させる最初のステップです。

そもそもLMSとは何か — eラーニングシステムとの違いを整理する

LMS(Learning Management System:学習管理システム)とは、組織における学習活動を一元的に管理するためのプラットフォームです。コンテンツを配信するだけでなく、「誰が・何を・どこまで学んだか」を記録し、教育施策の効果を可視化することを主な目的としています。

LMSを比較検討する前に、混同されやすい類似サービスとの違いを整理しておくことが重要です。言葉の定義がずれたまま選定を進めると、要件定義の段階でベンダーとの認識齟齬が生じやすくなります。

LMSが担う3つの役割 — コンテンツ配信・進捗管理・効果測定

LMSの機能は、大きく次の3つに整理できます。

  • コンテンツ配信:動画・スライド・テストなどの学習教材を受講者に届ける機能です。SCORMなどの標準規格に対応しているシステムであれば、外部制作のコンテンツも取り込めます。
  • 進捗管理:受講者ごとの学習状況(受講率・完了日・テスト得点など)をリアルタイムで把握できます。管理者が個別にフォローする際の判断材料になります。
  • 効果測定:レポート機能を通じて、研修の定着度や部門別の受講傾向を分析できます。教育投資の費用対効果を説明する場面でも活用されます。

LMS・eラーニングシステム・LXPの違いを一覧で比較

「eラーニングシステム」はLMSとほぼ同義で使われるケースが多いですが、厳密には学習コンテンツの提供に特化したサービスを指す場合もあります。一方、LXP(Learning Experience Platform:学習体験プラットフォーム)は、学習者自身が関心に応じてコンテンツを選ぶ「自律学習」を支援する点でLMSと性格が異なります。

  • LMS:管理者主導で学習を設計・管理する。コンプライアンス研修や資格取得管理など、受講の義務化・記録が必要な用途に向いています。
  • eラーニングシステム:LMSと重複する概念。コンテンツ配信機能を中心に据えた製品群を指すことが多いです。
  • LXP:学習者が自ら学びを選ぶ設計。スキルアップや自律的なキャリア開発を目的とした場面で選ばれます。
  • 研修管理ツール:集合研修の日程調整・参加者管理・アンケート収集に特化したツールです。eラーニング配信機能を持たないものが多いです。

自社の目的が「受講を義務化し、記録・証跡を残すこと」であればLMSが適しています。「社員が自発的に学ぶ文化をつくること」が優先であれば、LXPの検討も視野に入ります。どちらを選ぶかは、次のセクションで扱う「目的の整理」と直結します。

選定前に決めること — 「目的」と「利用形態」で候補は絞られる

LMSの選定作業に入る前に、まず自社の「目的」と「利用形態」を言語化しておく必要があります。この前段を省いたまま機能比較に進むと、後から要件の抜け漏れが発覚するケースが少なくありません。

社内研修用途と教育事業用途では何が違うのか

LMSの用途は大きく2つに分かれます。ひとつは社内の人材育成を目的とした利用、もうひとつは外部向けの教育事業・有償研修としての利用です。この違いは、必要な機能・契約形態・拡張性の要件に直接影響します。

社内研修用途では、人事システムや既存の社内ツールとの連携、受講管理・進捗レポートの精度、管理者の運用負荷の低さが重視されます。一方、教育事業用途では、受講者への課金・決済機能、外部ユーザーの大量登録への対応、ブランディングに沿ったUI変更など、「事業として成立させるための機能」が求められます。同じLMSであっても、どちらの用途を主軸に設計されているかによって、向き不向きが明確に異なります。

選定前に確認すべき5つの前提条件

製品の比較に入る前に、以下の5点を社内で確認・合意しておくことが選定精度を高めます。

  1. 利用目的の明確化:社内研修の効率化か、外部向け教育サービスの構築か
  2. 対象ユーザー数と増減の見込み:現在の規模だけでなく、1〜3年後の拡張可能性も見積もる
  3. コンテンツの形式:動画・テスト・PDFなど既存素材の形式と、新規制作の予定を整理する
  4. 運用体制:専任担当者の有無、IT リテラシーのレベル、ベンダーサポートへの依存度
  5. 連携が必要な既存システム:人事システム・SSO(シングルサインオン)・決済基盤など

これらを言語化しておくと、製品ごとの「合う・合わない」が比較段階で判断しやすくなります。選定の精度は、比較表の充実度よりも、この前提条件の解像度に左右されることがほとんどです。

LMS比較の6つの観点 — 選定で見るべきポイントを体系化する

LMSの選定では、製品ごとの機能一覧を並べて比較するだけでは判断を誤りやすいです。自社の運用実態や将来の拡張方針まで視野に入れた6つの観点で評価することで、候補の絞り込みが精度を増します。

①機能の過不足 — 必須機能とあれば便利な機能を分けて整理する

LMSが持つ機能は製品によって大きく異なります。まず「なければ導入できない機能」と「あれば運用が楽になる機能」を社内で明文化しておくことが重要です。

確認すべき問いは次のとおりです。

  • テスト・小テスト機能、修了証の自動発行、受講進捗の一括管理は備わっているか
  • SCORM(eラーニングコンテンツの標準規格)に対応しており、既存コンテンツを流用できるか
  • レポート・分析機能は管理者が自力で操作できる粒度か

「全部入り」の製品を選んで過剰な費用を払うよりも、必須機能に絞って選定したほうが運用コストを抑えられるケースが少なくありません。

②コスト構造 — 初期費用・月額・従量課金の違いと総保有コストの考え方

LMSの費用は「初期費用+月額固定」が多いですが、アクティブユーザー数や受講数に応じた従量課金を採用する製品もあります。月次の見積もりだけで判断すると、利用規模が拡大したときに想定外のコスト増が発生することがあります。

確認すべき問いは次のとおりです。

  • ユーザー数が増えた場合の追加費用はどう算定されるか
  • カスタマイズや機能追加は別途費用が発生するか
  • 3年間の総保有コスト(TCO)で比較した場合、どの製品が最も合理的か

③操作性・UX — 管理者側と学習者側それぞれの使いやすさを評価する

LMSは管理者と学習者の双方が日常的に使うシステムです。管理画面が複雑すぎると運用担当者の負担が増し、学習者向けの画面が使いにくければ受講完了率が下がります。

確認すべき問いは次のとおりです。

  • 無料トライアルや操作デモで、実際に管理者側の設定フローを試せるか
  • 学習者がスマートフォンからでも支障なく受講できるUIか
  • ITリテラシーが高くない社員でも操作に迷わない設計か

④外部システム連携 — HR系・CRM・SSOとの接続要件を確認する

LMSを単体で運用する場合でも、既存のHRシステムや社内ポータルとの連携が後から必要になるケースがほとんどです。API(システム間の接続仕様)やSSO(シングルサインオン:一度のログインで複数システムを利用できる仕組み)への対応状況は、導入前に必ず確認しておく必要があります。

確認すべき問いは次のとおりです。

  • 人事システム(SmartHR、SAP SuccessFactorsなど)との社員情報の自動連携は可能か
  • SSOにはどの認証方式(SAML、OAuthなど)で対応しているか
  • API連携の仕様書は公開されており、自社の開発リソースで対応できる複雑さか

⑤セキュリティ・権限管理 — RBAC対応とデータ保管場所を確認する

社員の受講履歴や評価データは個人情報に相当します。RBAC(Role-Based Access Control:役割ベースのアクセス制御)に対応しているかどうか、またデータがどの国・地域のサーバーに保管されるかは、コンプライアンス上の重要な確認事項です。

確認すべき問いは次のとおりです。

  • 部門・役職・雇用形態ごとに閲覧・操作権限を細かく設定できるか
  • データの保管場所は国内か、海外サーバーの場合は自社のセキュリティポリシーと整合するか
  • ISO 27001などのセキュリティ認証を取得しているか

⑥サポート・カスタマイズ対応 — 運用開始後の伴走体制を見極める

LMSは導入して終わりではなく、運用を重ねながら改善していくシステムです。初期設定支援・操作トレーニング・問い合わせ対応といったサポート体制の充実度は、製品の機能と同程度に重要な選定基準になります。

確認すべき問いは次のとおりです。

  • 導入後のサポート窓口は日本語対応か、また対応時間・チャネル(電話・メール・チャットなど)はどうか
  • 業務フローに合わせた画面カスタマイズや機能追加の依頼は受け付けているか
  • カスタマイズの場合、費用・納期・対応範囲の目安を事前に開示してもらえるか

LMSのタイプ別比較 — クラウド型・オンプレミス型・パッケージ型の違い

LMSの導入形態は大きく3つに分類できます。クラウド型・オンプレミス型・パッケージ型です。それぞれに異なる特性があり、自社の規模・セキュリティ要件・予算感によって最適な選択肢が変わります。

クラウド型・オンプレミス型・パッケージ型の比較表

まず3つの形態を主要な観点で整理します。

  • クラウド型:ベンダーのサーバー上でシステムが稼働するSaaS形式。初期費用を抑えてすぐに使い始められる反面、カスタマイズの自由度は低い。
  • オンプレミス型:自社サーバーにシステムを構築する形式。セキュリティポリシーや既存システムとの連携を細かくコントロールできるが、構築コストと運用負荷が大きい。
  • パッケージ型:既製のソフトウェアを自社環境に導入する形式。クラウド型とオンプレミス型の中間的な位置づけで、ある程度のカスタマイズが可能。ライセンス費用が発生する。

各形態の特徴を比較すると、以下のように整理できます。

  • 初期費用:クラウド型は低い/オンプレミス型は高い/パッケージ型は中程度
  • カスタマイズ性:クラウド型は低い/オンプレミス型は高い/パッケージ型は中程度
  • セキュリティ制御:クラウド型はベンダー依存/オンプレミス型は自社管理/パッケージ型は自社管理寄り
  • 運用負荷:クラウド型は低い/オンプレミス型は高い/パッケージ型は中程度
  • スケーラビリティ:クラウド型は高い/オンプレミス型は低い/パッケージ型は限定的

自社に合う導入形態を選ぶ3つの判断基準

導入形態を選ぶ際は、次の3つの観点を基準にすると判断しやすくなります。

  1. セキュリティ要件の厳しさ

    金融・医療・官公庁など、個人情報や機密情報を大量に扱う業種では、データをクラウド上に置くことを社内規定や法令が制限しているケースがあります。このような場合は、自社内でデータを完全管理できるオンプレミス型が有力な選択肢になります。

  2. スモールスタートしたいかどうか

    まずは小規模に試して効果を検証したい、あるいは予算を最小限に抑えてスタートしたいという場合は、月額課金制のクラウド型が適しています。利用者数に応じて費用がスケールするため、段階的な拡大にも対応しやすいです。

  3. 独自ブランドで外部提供するかどうか

    自社の教育コンテンツを顧客や外部ユーザーに提供するビジネスを立ち上げる場合、UIのブランディングや機能仕様を細かく制御する必要が生じます。このようなケースでは、カスタマイズ性の高いオンプレミス型、またはカスタム開発を前提としたパッケージ型が向いています。

導入形態の選定は、機能比較よりも先に行うべき判断です。形態が決まることで、比較検討するLMSの候補が自然と絞り込まれます。

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教育事業立ち上げ用途でのLMS選定 — 社内研修とは異なる視点

LMSの比較記事の多くは、社内研修のデジタル化を前提として書かれています。しかし、有償の資格講座・外部向けeラーニング・受講料収入を伴うB2C・B2B研修サービスなど、教育事業として収益化を目的とする場合、選定で確認すべき項目はまったく異なります。CLANEは8年以上にわたって教育事業のシステム支援を担当してきましたが、社内研修向けのLMSをそのまま教育事業に転用しようとして、後から大幅な改修や乗り換えが必要になったケースは少なくありません。

収益化・決済連携が必要な場合に確認すべき機能

教育事業においてLMSに求められる最初の問いは、「受講料をどう回収するか」です。社内研修では不要な決済機能が、教育事業では中核要件になります。確認すべき機能は以下の通りです。

  • 決済連携の柔軟性:クレジットカード・請求書払い・法人一括購入など、複数の支払い方法に対応できるか。Stripe・PayJPなどの決済サービスとのAPI連携が標準で用意されているかを確認します。
  • コース単位・サブスクリプション単位での販売設計:「1講座いくら」「月額いくらで全講座受け放題」など、販売モデルに合わせた課金設計ができるかどうかが選定の分岐点になります。
  • 受講有効期限の管理:購入から一定期間のみ視聴可能にする期限管理は、社内研修用LMSでは省略されているケースが多くあります。有償コンテンツの不正利用防止にも直結するため、必須要件として確認してください。
  • 領収書・請求書の自動発行:受講者への書類発行を手動で行うと、運営コストが増大します。自動発行の仕組みが整っているかどうかを確認します。

受講者体験とブランド品質を左右するUI・ホワイトラベル対応

社内研修であれば、LMSのロゴや標準デザインがそのまま表示されていても大きな問題にはなりません。一方、外部に販売する教育サービスでは、受講者が触れる画面のブランド品質が事業の信頼性に直結します。

確認すべきポイントは、ホワイトラベル対応の範囲です。自社ドメインでの運用・ロゴの差し替え・カラーテーマの変更といった基本的なカスタマイズにとどまらず、受講者が実際に操作するコース一覧・動画プレイヤー・進捗画面の設計自由度まで確認する必要があります。LMSによっては、ホワイトラベルを謳いながらもフッターにプロバイダー名が残るケースがあります。デモ環境で実際の受講者画面を確認することを推奨します。

また、スマートフォンからの受講比率が高い教育事業では、モバイルUXの完成度も選定基準に加えてください。動画の再生安定性・テストの操作性・証明書の表示品質など、受講者が直接体験する要素を実際に操作して評価することが重要です。

事業フェーズ別のLMS選定 — スモールスタートから拡張まで

教育事業のLMS選定では、現在の規模だけでなく、1〜2年後の事業拡張を見据えた設計が必要です。フェーズごとに優先すべき観点が変わります。

  • 立ち上げ期(受講者数〜数百名、コース数〜数十本):初期費用を抑えつつ、決済連携と基本的なコース管理が実現できるクラウド型LMSが現実的な選択肢です。月額固定のSaaS型であれば、受講者数が少ない段階でも固定費を低く抑えられます。ただし、のちのカスタマイズ制約には注意が必要です。
  • 成長期(法人契約・複数コース・受講者数千名規模):法人向けの一括購入・受講者の所属企業別管理・学習レポートの企業単位出力など、B2B販売に対応した管理機能が必要になります。この段階でLMSを乗り換えると、受講者データの移行コストが発生するため、成長期の要件を立ち上げ期の選定時に先読みしておくことが重要です。
  • 拡張期(独自ブランドの確立・外部API連携・大規模カスタマイズ):SaaS型の標準機能では対応できない要件が増えてきます。スクラッチ開発またはオープンソース型LMS(Moodleなど)をベースにしたカスタマイズが現実的な選択肢になります。CLANEが手がけた教育事業の多くでは、このフェーズ移行のタイミングでシステムの刷新を行っています。

教育事業向けのLMS選定は、「現在使えるか」だけでなく「事業モデルに合った収益化ができるか」「受講者に見せられるブランド品質か」「拡張フェーズに耐えられるか」という3軸で評価することが、導入後の失敗を防ぐ上で重要です。

導入前チェックリスト — 発注前に社内で確認しておくべき項目

LMS選定を進める際、ベンダーへの問い合わせ前に社内の認識がそろっていないと、要件定義が後から変わり、選定作業のやり直しが発生しやすくなります。以下のチェックリストを活用して、抜け漏れを防いでください。

要件整理チェックリスト(目的・ユーザー・コンテンツ・運用)

  • 導入目的が言語化されているか:「コンプライアンス研修の受講率向上」「新人教育の工数削減」など、解決したい課題を具体的に定義する
  • 利用ユーザーの属性と人数が確認できているか:社員のみか、派遣・パート・外部パートナーも含むかによって、必要なライセンス形態が変わります
  • 既存コンテンツの形式が整理されているか:PowerPoint・PDF・動画など、移行対象のファイル形式と量を把握しておくと、対応可否の確認がスムーズになります
  • 運用担当者が決まっているか:LMSは導入後の日常運用が重要です。コンテンツ更新・受講管理を担う担当者と、その工数の目安を確認してください
  • 他システムとの連携要否が明確になっているか:人事システム・シングルサインオン(SSO)との連携が必要な場合、情報システム部門と事前に確認が必要です

ベンダー評価チェックリスト(機能・セキュリティ・サポート・費用)

  • 必須機能と「あれば望ましい」機能が分けられているか:機能要件をMust・Wantで整理しておくと、複数ベンダーの比較が客観的に行えます
  • セキュリティ要件が確認できているか:ISO 27001認証の有無、データの保存先(国内・海外)、アクセス権限管理の粒度を確認します
  • サポート体制が自社の運用に合っているか:電話・チャット・専任担当の有無と、対応時間帯を事前に確認してください
  • 初期費用・月額費用・従量課金の内訳が提示されているか:ユーザー数増加時の費用変動も含めて、3年間の総費用を試算しておくことが推奨されます
  • 契約解除・データ移行の条件が確認できているか:サービス終了時のデータエクスポート形式と、移行支援の有無を確認しておくと、ベンダーロックインのリスクを抑えられます

LMS選定でよくある質問 — 意思決定者が迷いやすい論点に答える

無料LMSと有償LMSの違い — どこから有償を検討すべきか

無料LMSの代表例としてMoodleが挙げられますが、ソフトウェア自体の費用がゼロなだけで、サーバー費用・カスタマイズ工数・保守対応は別途発生します。結果として、社内にエンジニアリソースがないケースでは有償サービスより総コストが高くなることも少なくありません。

目安として、ユーザー数が50名を超えるか、管理者が専任でない場合は、サポートや運用負荷を含めた有償プランの費用対効果を比較検討する価値があります。月額課金型の有償LMSであれば、ユーザー単価は数百円〜数千円程度が多く、50〜100名規模から有償の方が割安になるケースが見られます。

既存システムとの連携 — HRMSやSSOへの接続可否の確認方法

人事情報システム(HRMS)や勤怠管理ツールとの連携可否は、選定の早い段階で確認が必要です。確認すべき主な項目は以下のとおりです。

  • SSO(シングルサインオン)対応:SAML 2.0やOAuthへの対応有無
  • API連携:受講データや人員情報を既存システムと双方向でやり取りできるか
  • SCORM・xAPI対応:既存のeラーニングコンテンツをそのまま読み込めるか

ベンダーへの初回問い合わせ時に「現在利用しているシステム名」を伝え、実績の有無を具体的に確認することが確実です。

コンテンツ移行・乗り換えにかかる工数の目安

LMSを乗り換える際の工数は、既存コンテンツの形式によって大きく異なります。SCORM形式で書き出し済みのコンテンツであれば移行は比較的容易ですが、旧LMS独自形式で作成したコンテンツは再制作が必要になるケースがほとんどです。コンテンツ数が50本以上ある場合、移行作業だけで数週間〜1か月以上を見込むことが一般的です。乗り換えを検討する際は、現行LMSからのデータエクスポート仕様を事前に確認しておくことが工数削減につながります。

まとめ — LMS選定を成功させる6つの観点と次のステップ

本記事では、LMSの選び方に迷う意思決定者に向けて、比較すべき6つの観点と導入前チェックリストを中心に解説してきました。ここで要点を整理します。

選定を成功させる6つの観点の振り返り

LMSの導入ポイントをまとめると、以下の6点に集約されます。

  1. 目的と利用形態の明確化:社内研修なのか、外部向け教育事業なのかで、候補となるシステムは大きく絞られます。
  2. 学習管理機能の充足度:進捗管理・テスト・修了証など、自社の運用に必要な機能が過不足なく揃っているかを確認します。
  3. 導入・運用コストの総量:初期費用だけでなく、月額料金・サポート費用・追加開発コストを含めたTCO(総所有コスト)で比較します。
  4. システム連携と拡張性:人事システムや決済基盤との連携可否が、運用負荷に直結します。
  5. セキュリティとデータ管理:受講者データの取り扱いポリシーや、アクセス権限の設計が自社の要件を満たすかを確かめます。
  6. サポート・保守体制:導入後のトラブル対応や機能アップデートの頻度は、長期運用の安定性を左右します。

チェックリストを使った進め方

発注前のチェックリストは、「要件の抜け漏れ防止」と「社内合意形成の効率化」の両面で機能します。IT担当者・人事・経営層が同じ基準で候補を評価できる状態を作ることが、選定プロセスを前に進める上で重要です。

LMS選定は「教育設計〜運用〜収益化」の一部として捉える

LMSはあくまでツールです。システムを選んだだけでは、学習効果も事業収益も生まれません。コンテンツ設計・受講者の導線・修了後のフォロー・収益モデルまでを一体で設計することが、導入を成果につなげる条件になります。特に教育事業の立ち上げ用途では、LMS選定と並行して教育プログラム全体の設計を進めることが少なくありません。CLANEは、こうした研修・教育事業の立ち上げ支援において、システム選定から教育設計・運用設計までを一貫して扱っています。

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